Marumaru's TinyPlaza

(2020.08.16)(book)ゴブリンスレイヤー1

『ゴブリンスレイヤー』1巻/蝸牛くも


ダイスの目に支配される世界の中で、決して神に自身の運命を委ねない者のなんと格好いい事か。

前々から勧められていた作品だったんですが、小説版の1巻をやっと読みました。もとが投稿小説だったみたいで、この1巻でも綺麗に話としてまとまっています。

作者がTRPGのD&Dに影響を受けているらしく、「そういう」世界観です。なんですが、この物語のすごいところは「そういう」世界なんだと読者に納得させる世界の全体像を説得力を持って描かれいるところ。いくら有名作品の影響があるとは言え、冒険と危険、そしてロマンに満ちたファンタジー世界の話なんだと知らぬ間に納得していました。

主人公は勇者が地上の存亡をかけて魔王軍と戦っている世界の片隅で、俺TUEEEEするでもなく、吟遊詩人にその功績を詠われるでもなく、ひたすらゴブリン討伐に奔走する訳ですが、そういった日影の存在を主人公にする為には、影が映えるぐらいの明るい世界が必要なんです。縁の下の力持ちを魅力的に描くには、縁側を支えられるだけの立派な家の存在が不可欠です。世界の全体像が分からないのに枝葉の部分だけを描くと、ただの小さな世界になってしまう。そんな小さな世界の主役は主人公として魅力的ではないんです。

なんだろう。MMORPGで他のみんながPT組んで狩りに行ってレベリングに励む中、下手なレベリングガチ勢よりも多くの時間と手間のリソースをつぎ込んで生産職に没頭する人とか居たじゃないですか(居たんですよ)。魅力的なSS(スクリーンショット)を取る為に下手なガチ勢顔負けの強さと装備を準備して、高価なアイテムを湯水のようにガブ飲みするのに、そんなのは一切気にせずにただただ自分が気に入る一枚のSSを追い求める人とか居たじゃないですか。

造られた世界があって、その大きな流れに乗って皆が行動し、気まぐれな神の手(例えばダイスロール)に翻弄される中で、自分だけの確固たる信念を持って、その世界の片隅で何かの目的に向かって奔走する。そんな存在はとても特別で格好いいんです。ぱっと見ただけじゃ何か変な事をしている変わっている人。話してみてもイマイチ要領を得ない。だけど、心に寄り添い、視線の先を一緒に見た時に、今までに見た事が無い新しい景色が見える事があります。

魅力的な世界の中、確固たる意志に基づいて繰り広げられる世界の片隅の物語、その頁をワクワクしながらめくりたいと思いました。




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