Marumaru's TinyPlaza

(2025.07.15)(book)All You Need Is Kill

『All You Need Is Kill』/桜坂洋


色々ネタバレしてるので注意






















少し前に観た映画の原作小説。映画を観た後、原作が面白い!と方々から勧めて頂いたので原作を読みました。

まず、映画版との比較なんですが、映像表現に関しては映画版の方が派手で格好良かった。小説版では登場人物が少なくシンプルな人間関係でしたが、劇場版では所属する部隊のメンバー全員を掘り下げていましたから。とにかく機動ジャケットという装備を映像化するにあたり、ハリウッドの力はすごいと思いましたね。メカメカしく派手で大人数の戦闘を見事に描いていたのは流石劇場版と思いました。

そして、ストーリーですが、これも劇場版の方がシンプルになっていました。小説版だとキリヤとリタの関係にフォーカスを当てて描かれており、タイムループを繰り返す中で、二人にもギタイと同じくアンテナ機能が備わってしまった。すなわち、2人のうちどちらかが死なないとループの無い未来へは行けない。とう二者択一を迫る中での心の機微が描かれていました。

対して劇場版はその設定を丸っと消してましたね。小説版で言うギタイサーバとバックアップをα、βと名付け、二人を両方殲滅すればギタイのループは終わり戦闘は終わる。つまり、とにかく敵を倒してしまえばハッピーエンドが訪れる。力こそパワー、U・S・A・!なストーリーでしたね。どちらが良い悪いという話ではなく、それぞれのメディアに応じた見せ方があるという話かと。

しかし、小説原作作品の映画化って大抵コケるのに、どちらともそれぞれに面白い、と言うのは稀有な事かもしれません。

次に原作小説のストーリーですが……。これは多分、タイムリープしながら経験を積み状況を改善してトゥルーエンドを目指しループの円環を断ち切る、っていう仕掛け自体が一番の面白さだと思うんです。だから、その部分を含めて先に映画版(しかもアクション表現はこちらが上)を見てしまうと、どうしてもループという仕掛けに対する目新しさは薄れてしまいます。

何より、これも完全に見る時期の問題なんですが、この原作小説が発刊されたのは2004年。当時としてはとても目新しくてワクワクする内容の物語だったであろう事は想像に難くないのですが、先にSTEINS;GATE(XBOX版2009年、PC版2010年)に触れてしまっているのがどうしても……。なので、この物語の仕掛けについてはあまり公平には語れないです。

これ、同じような感覚を、各種デスゲームものの作品に触れた後で『クリムゾンの迷宮』/貴志祐介を読んだ時に感じました。

なのですが、原作小説は二人の関係の描き方、最後の余韻がジャンプJブックスらしくてとても甘酸っぱいものでした。ジャンプJブックスは『おいしいコーヒーのいれ方』でも読めるように、青春の瑞々しさを描かせたらピカイチのレーベルだと思っています。

それと、当時はまだループものが珍しかったからという配慮なのか、全体のループの流れが章で区切った形で図説されていてとても分かりやすかった。まあ、分かりやすい反面、最高のネタバレとも言えますが……。多分、最初に発刊された版には書かれていなかったんだろうな。

最後に、小畑先生のイラストが非常に魅力的でエロかった。




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