Marumaru's TinyPlaza

(2012.05.18)(book)大西洋漂流76日間

『大西洋漂流76日間』/Steven Callahan(著)長辻 象平(訳)


海上遭難者の90%は遭難から3日以内に死亡すると言う統計の中、ヨットで航海中に海に投げ出され脱出用のイカダで76日間漂流をした船乗りの話。

あらすじの「イカダで76日間」と言う部分を読んだ時、頭の中には木材をくくり合わせて真ん中に旗が立っているようなイカダが浮かんでいたんですが、実際はイカダと言うよりテントか小さな家と言えるぐらいにしっかりとしたものでした。イカダを始めとして、装備の多さ、充実ぶりに驚きました。確かに、実際にそれらの装備があったからこそ海上で生き延びる事が出来た訳ですが、最初は「なんでそんなものまでもっているの?」と驚きました。だけど、本気でやっている人だからこそ、様々な状況を想定しての装備があるんですね。

しかし、何が一番の驚きはスティーヴンさんの精神力の強さです。話のあらすじと結末を知っていて、結果的にいつどの辺りに居たかを分かった上で読んでいてもなお、孤独と絶望が伝わってくる状態。それなのに、単身で海に放り出されて、サメが襲ってきてイカダが破れ体もボロボロになっていく状況の中で、本当にどうしてスティーヴンさんは生に向かって頑張れたんだろう。

ビタミン不足で体の動きが鈍くなれば補う為に魚の血や内臓を摂取する。イカタが破れれば、素材を寄せ集めて修理する。浸水すれば空き缶で水を汲み出す……分かるよ、やってることは分かるけれど、どうして孤独な海の上、しかも大西洋のど真ん中でそんなに冷静になれるんだろう。真っ暗な海はそれだけで怖い、体が傷つけばそれだけで痛い、そんな状況の中、必死に自分と戦い続け自分を鼓舞していくスティーヴンさん。タイムアップの分からない戦いに負けずに戦い続けたその姿は、陳腐な言葉ですが感動しました。

知恵と道具を総動員して漂流生活を生き延びる海上サバイバル物語としても面白かったですが、スティーヴンさんの怖いぐらいの意志の強さ、前向きさ、勇敢さを是非感じて欲しい。

最後に、スティーヴンさんはこの漂流が終わった後も普通にヨット乗りとして海に漕ぎ出してるそうです。本当に何なの……。




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